ツチニンの使い方がわからない

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真・DMGP1th テキストガバレージ

デュエルマスターズ1弾発売20周年というわけで、今から20年前に開催された真・DMGP1stの思い出について嘘と捏造を交えて書いていくこととしよう。

まえがき

2002年某日、3000人ものデュエリストたちが頂点を目指すべく全国各所から幕張メッセに集まった。コロコロコミックデュエルマスターズを知った者、元々MtG遊戯王をプレイしていてそこからデュエルマスターズにも手を伸ばした者、知人の勧めや地域での流行りから始めた者、様々だ。

熱き野望を持つデュエリストたちが頂点を目指す戦いの火蓋が今、切って落とされた。

大会の様子

大会ルール

予選はスイスドロー式で1本勝負。上位64名が予選抜け。ベスト8より2本先取。

予選 前半

デュエルマスターズ黎明期ということもあり、ネットが発達しておらず情報の流通も遅い。そのため各々が考える多種多様の1軍デッキが集まった。ある者は《ボルシャック・ドラゴン》軸の火文明デッキ、またある者は《混沌の獅子デスライガー》《暗黒の騎士ザガーン》軸の黒城デッキ、ある者は白凰に憧れ《光輪の精霊シャウナ》《天空の守護者グラン・ギューレ》軸の光文明デッキ等を使用していた。スターターセットで当たった《ガトリング・ワイバーン》を切り札にする者もいた。

予選開始序盤こそは多種多様なデッキが見られたが、上記で挙げたようなデッキは全て"あるデッキ"に食い物にされてしまった。いや、「あるカード3枚」というべきか。デュエルマスターズ黎明期、秘密裏に立ち上がっていたチーム「魚釣り倶楽部」が持ち込んだデッキに入っていた3枚の切り札がこちらだ。

《アクア・スナイパー》はブロッカーで固められた盤面を1枚で解決したり、大型獣同士のバトルを拒否したりするのに十分過ぎる性能だった。まさに攻めも守りも完璧と言える。そして《一角魚》は頑張って出した《ボルシャック・ドラゴン》《暗黒の騎士ザガーン》をたった4コストで手札送りにする凶悪なカードだ。大型獣を軸としたデッキは全て《アクア・スナイパー》《一角魚》に太刀打ちできなかった。

また、小型獣へは《ソーサーヘッド・シャーク》1枚で対応可能で、自身の《一角魚》を戻しながら相手のアタッカーウィニーを戻すことができた。

対戦の様子も最悪だ。最初は目を輝かせて元気良く「オレはコイツで決める!《ボルシャック・ドラゴン》召喚!!」と叫んでいた参加者も、何度も出てくる《一角魚》《アクア・スナイパー》により切り札をバウンスされ続け、目からハイライトが消えていった。そして《一角魚》《アクア・ハルカス》《青銅の鎧》でチマチマ殴られているうちにゲーム終了。大泣きしてデッキを叩きつけて帰っていく参加者もいた。それほどまでに、「攻撃させてもらえない」というのはゲーム体験的に最悪だった。

予選が半分終了した頃には他の採用カードや文明は様々だったとはいえ、《アクア・スナイパー》《一角魚》《ソーサーヘッド・シャーク》軸のデッキしか残っていなかった。

予選 後半

前半はゲームへの理解度の差で試合時間も比較的短く済んだが後半は水文明主軸のバウンスデッキ同士のマッチングが多発した。そうなると問題となるのは試合時間である。互いに《アクア・スナイパー》《一角魚》《ソーサーヘッド・シャーク》を叩きつけ合うゲームが多発し、試合時間は平気で30分を超えた。プレイの遅い卓では50分オーバーすらザラだった。大型獣を《一角魚》で戻して勝つゲームから、《アクア・スナイパー》《一角魚》《ソーサーヘッド・シャーク》を互いに戻し合い、20ターン以上かけて相手を殴り切るかデッキ切れさせるかのゲームになっていた。

「制限時間ないの!?」と読者の皆様はお思いだろう。なんとこの大会は黎明期というのもあってルール整備が追いついておらず、制限時間も設けられていなかったのだ。そして大会運営は1試合が長すぎることを全く想定していなかった。試合開始から勝敗報告、マッチング決定、次の試合のための着席等を含めると1試合のサイクルはどうしても1時間以上かかってしまう。

そんな中でも予選は進んでいく。超低速ゲームゆえ、ミラーではデッキ40枚で戦うゲームとなる。残デッキ枚数≒残HPのようなものだ。分かりやすいフィニッシャーがおらず、カードが全体的に弱いのでざっくり言うと「カードをたくさん使ったほうが勝つ」ゲームだ。しかしカードをたくさん使うために新たにドローをするとデッキ≒HPが削られてしまう。そんなジレンマを解決するカードが《ギガルゴン》だった。

サルベージによりドローを再現でき、山札も余計に削らないこのカードは「カードをたくさん使う」を無理やり実現でき、自身もクリーチャーなため墓地と手札を行き来させることでリソースが実質無限ということで、ゲーム性を大きく変えた。

《ギガルゴン》の発見は革命的で、それまで誰もが強いと信じて疑わなかった《デーモン・ハンド》《デス・スモーク》を紙屑にした。いくらアド損しようとも《ギガルゴン》でいくらでも取り返すことができ、《ギガルゴン》を出すだけの暇も十分にあるため、墓地回収どころか墓地→マナでのブースト(例ːオチャッピィ)すらできない呪文は撃つだけで損をしてしまう。

①《デーモン・ハンド》でクリーチャーを破壊する。
②《ギガルゴン》で既に破壊されていたクリーチャーと先ほど《デーモン・ハンド》で破壊されたクリーチャーを回収する。
③《デーモン・ハンド》を撃った側は《デーモン・ハンド》の分の損をし、《ギガルゴン》側はバトルゾーンに《ギガルゴン》、手札に2枚のクリーチャーが残る。マナが余っていればサルベージして即座にプレイすることも可能。

《ギガルゴン》の強さは認知されていたもののその重さから採用枚数は2枚程度だった。しかし、「デッキ全体のカードパワーが低すぎてデッキ40枚では相手を倒し切るほどの出力が出せない」のがミラーでは顕著に出るため一部強者は《ギガルゴン》を4投し、持久戦を制していた。相手にcip持ちクリーチャーの除去をさせて、《ギガルゴン》で使い回していく動きは「ギガルゴンループ」と呼ばれたり、《ギガルゴン》で手札を増やしていく動きは「ギガルゴンドロー」と呼ばれたりもした。

また、開拓が進むとバウンスに対しては「軽量クリーチャーを大量展開しバウンスする側の弾切れを狙う」立ち回りがある程度有効であるとわかったが、《妖姫シルフィ》によって崩されていく。いくら除去が弱いとはいえ「1対複数交換が可能」「「クリーチャー」」となると話は別だ。

《アクア・スナイパー》《妖姫シルフィ》は互いの弱点をカバーし合う形でお互いを強化してしまい、《アクア・スナイパー》はさらに手が付けられない強さになってしまった。そして《妖姫シルフィ》の発見により《トゲ刺しマンドラ》にもスポットが当たる。相手の《妖姫シルフィ》を起点に山札を減らさずマナ加速ができ、パワーが4000なためシルフィラインを超えていて、cipで若干のバウンス耐性も持ち合わせている。その上DMS-01 スターターセットで《ガトリング・ワイバーン》と比べられ評価を不当に下げられているため入手が楽だった。

予選後半では《ギガルゴン》を3~4枚採用している者、《妖姫シルフィ》の強さに気づいてる者、またはその両方がミラーを制して勝ち上がった。

予選終了

長い長い予選が終了した。時計は夜の10時を回っていた。
ここで会場の終了時刻となってしまい、幕張メッセを追い出されてしまった。
運営は悩んだ。本戦のための会場が後日借りられても、参加者の都合も合うか分からない。しかし、ここまで鬱ゲーを繰り返してきた予選通過者の想いを無駄にはできない。

予選通過者数名が進言した。
「俺たち外で試合します」
そう、幕張メッセの外の床で本戦を続けるというのだ。彼らの目は"マジ"だった。正気の沙汰ではないが、その気迫に押され、大会運営を続けることにした。

しかし夜遅くに外ではカードが見えない。そしてこの時代スマートフォンなんて便利なものは存在しない。運営はジャッジにレジャーシートと懐中電灯を買いに行かせ、深夜でも試合が続行出来る体制を整えた。

予選突破者は64人。ここから1弾環境の覇者を決める長い夜が始まろうとしていた。

幾度となく出てくる《アクア・スナイパー》に丁寧に《ナチュラル・トラップ》を当てる。マナ回収が現実的ではない1弾環境の対戦ではおなじみの光景だ。ジャッジが懐中電灯で照らす下ではこのようなやりとりが行われていた。大会上位レベルでは《青銅の鎧》をプレイしすぎて《アクア・スナイパー》が複数枚マナ落ちしたのが響いてそのまま負けてしまうこともあった。

対戦中、ゲームが長すぎて睡魔に耐えきれず寝落ちしそのまま敗北する参加者も現れた。もはや体力勝負であり、盤外の全てで戦う総力戦となっていた。

ジャッジも疲弊しており、会場外の道でそのまま寝落ちしたり、試合を見ながらウトウトしていた。そこで、1戦ごとにジャッジを交代し、仮眠を取りながら運営を繋いでいくことにした。

そして、初代王者誕生

勝戦では《アクア・スナイパー》《一角魚》のバウンスにはコストの軽さで、《妖姫シルフィ》《ソーサーヘッド・シャーク》には素のパワーの高さで抗える《捕らえる者ボーン・スパイダー》が大活躍。
逆スレイヤー故に敬遠されていたが、「ウィニーは《妖姫シルフィ》《ソーサーヘッド・シャーク》が、大型獣は《アクア・スナイパー》《一角魚》が駆逐してくれるため、逆スレイヤーはバトルしないから関係ない」と言い換えることができる。《アクア・スナイパー》《妖姫シルフィ》ペアが見逃していた1枚のカード、それが《捕らえる者ボーン・スパイダー》だった。
《捕らえる者ボーン・スパイダー》を大量展開し、《アクア・スナイパー》の弾切れを狙う青黒緑バウンスミッドレンジが周りを出し抜く形で初代王者の座を手にした。

こうして、朝日がのぼる午前5時過ぎ、1弾環境の覇者が決まった。優勝者はコメントで「やっと終わった・・・」と優勝よりも鬱ゲーからの開放を喜んでいた。徹夜明けの目に朝日が刺さる。ジャッジはようやく帰れると言わんばかりに始発の電車に乗っていった。途中、夢の国へ行こうとする楽しそうな大学生やカップルたちを見て我々は何をやっているのだろうと賢者モードに入る者もいた。

後日談

この大会の映像は残っておらず、大会の状況は知る人ぞ知るものとなったが、大会参加者の一人が2chで大会の様子を事細かく書き込んだ。スレは当然大炎上。運営叩きスレ、1弾環境叩きスレ、アクアスナイパーアンチスレが次々に立てられた。
また、大手カードショップが「アクアスナイパーを禁止カードに!」運動を起こし、プレイヤーにアンケートを取ったり、集まったプレイヤーからの署名を公式に提出したりした。氏曰く、何人ものプレイヤーが《アクア・スナイパー》《一角魚》で切り札を戻され続けてデュエルマスターズを嫌いになってしまったとのこと。

そしてこのような大型大会で優勝したデッキは当然話題にもなるし、みんな同じようなデッキしか使わなくなったためマナ送りのカードは1回限りの《ナチュラル・トラップ》ではなく半永久的にマナ送りを行える《シェル・ストーム》へと移行した。

この先ずっと《アクア・スナイパー》が暴れ狂うかと思いきや、DM-02[進化獣降臨]が発売。
DM-02[進化獣降臨]ではDM-01環境の問題点をなくすべく進化クリーチャー、これだけハデな効果なのになぜかアンコモンで収録されたハンデス呪文《ロスト・ソウル》が導入され、バウンス鬱ゲーではない比較的健全なゲームとなった。ここから全国の子どもたちに大ヒットするカードゲームになったのは皆さんご存知の通りだろう。

古き良き思い出ばかり語られがちな1弾だが、このような負の側面もあったことをここに記しておきたい。

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